金継ぎの強度について
ヒビや欠けた器を美しく再生させる「金継ぎ」は、日本独自の美意識が込められた修復技法です。最近では手軽なキットや体験教室も増え、趣味として親しむ人も増えてきました。そんな金継ぎですが、実際に使うとなると「強度は大丈夫なの?」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。この記事では、金継ぎの強度や使用時の注意点について詳しく解説します。
金継ぎの強度
金継ぎで修復された器は、見た目だけでなく実用性も兼ね備えています。しかし、どの程度までなら安全に使えるのか、強度はどのくらいあるのかは気になるところです。ここでは、金継ぎに用いられる素材や硬化の仕組み、強度の目安について詳しく見ていきましょう。
日常使いには十分な強度がある
漆を使った金継ぎは、乾燥と時間をかけて硬化することで、実用に耐える強度を得られます。特に料理の盛り付けや、日常的な食器の使用であれば問題ありません。修復後の器を実際に使うことで、漆の艶が深まり、経年変化も楽しむことができます。
取っ手など力が集中する部分は要注意
ただし、すべての部位が同じように丈夫とは限りません。たとえばマグカップや急須の取っ手のように、細くて力が加わりやすい部分は再び割れてしまう可能性があります。特に強く握ったり持ち上げたりする箇所に金継ぎがある場合は、実用ではなく観賞用として扱うのが安心です。
漆は時間とともにさらに強くなる
漆は塗ってすぐに固まるわけではありません。一般的には半年程度で実用レベルの硬化に達しますが、その後も数年〜数十年をかけてじわじわと硬化を続けていきます。このため、修復から間もない器を使う際は特にやさしく扱い、環境にも気をつけましょう。
注意点
金継ぎされた器は使えるとはいえ、扱いにはいくつかの注意点があります。熱や水分、使用環境によってはせっかく修復した器が再び傷んでしまうことも。ここでは、使用時に気をつけたいポイントや避けるべき使い方についてご紹介します。
電子レンジや食洗機は使わない
金継ぎされた器は熱に弱いため、電子レンジでの加熱やオーブンの使用は避けましょう。特に金粉部分は火花が出る可能性があり危険です。また、食洗機や乾燥機のような高温・高水圧の環境も、漆や装飾部分の剥離につながります。洗うときはやさしく手洗いし、柔らかい布で水気を拭き取るのが基本です。
湿った状態での放置に注意
漆は空気中の酸素と水分を取り込むことで硬化しますが、器自体が常に濡れている状態は好ましくありません。水分が金継ぎ部分に長時間とどまると、強度が落ちる原因になります。使用後はすぐに洗い、しっかりと乾燥させてから保管しましょう。
接着剤を使う場合は食器対応か確認を
初心者向けの金継ぎキットには、瞬間接着剤やパテを使うタイプもあります。これらは扱いやすく、やり直しも効くのがメリットですが、口に入る可能性のある食器に使用する場合は注意が必要です。食器対応の素材かどうか、パッケージなどで必ず確認してから使いましょう。
金継ぎに向かない素材もある
陶器や磁器には適している金継ぎですが、常に高温になる土鍋や、長時間水に浸かる花瓶などには不向きです。また、プラスチックやガラス、木製の器は、漆との相性や加工難度が高く、専門的な技術が求められます。自作する際は素材にも配慮することが大切です。